A.労働

  1. 雇用の自由選択
    強制、拘束(債務による拘束を含む)または年季契約労働、非自主的な囚人労働、奴隷または人身売買による労働力を用いてはなりません。これには、労働またはサービスのために脅迫、強制、支配、拉致、または詐欺によって人を移送、隠匿、採用、譲渡、または受領することも含まれます。会社が提供した施設への出入りに不合理な制約を与えたり、施設における労働者の移動の自由に不合理な制約を課してはなりません。雇用プロセスの一環として、労働者へ、母国を離れる前に、雇用条件の記述を含む母国語による雇用契約書を提供する必要があります。すべての作業は自主的でなくてはならず、労働者は随時職を離れる、または雇用を終了する自由があります。雇用者およびエージェントは、政府発行の身分証明書、パスポート、または労働許可書(これらの保持が法律で義務付けている場合を除く)など、従業員の身分証明書または移民申請書を保持したり、またはその他破壊、隠匿、没収したり、もしくは本人による使用を阻止してはなりません。雇用者またはエージェントの採用手数料またはその他の手数料を支払うよう労働者に要求してはなりません。そのような手数料を労働者が支払ったことが判明した場合は、当該手数料は労働者に払い戻さなければなりません。
  2. 若年労働者
    児童労働は、いかなる製造段階においても使用してはなりません。ここで言う「児童」とは、15歳、または義務教育を修了する年齢、または国の雇用最低年齢の内、いずれか最も高い年齢に満たない者を指します。合法的な職場学習プログラムの使用は、すべての法規制が遵守されている限り、支援されます。18歳未満の労働者(若年労働者)を夜勤や残業を含む、健康や安全が危険にさらされる可能性がある業務に従事させてはなりません。参加者は、適用される法規制に従った、学生の記録の適切な維持、教育パートナーの厳格なデューディリジェンス、および学生の権利の保護により、学生労働者の適切な管理を確保するものとします。参加者は、適切なサポートとトレーニングをすべての学生労働者に提供するものとします。現地の適用法がない場合、学生労働者、インターン、および見習いの賃金率は、同様または類似の作業を行っている他の新人労働者と同じ賃金率でなくてはなりません。
  3. 労働時間
    ビジネス慣行研究によると、労働者の過労は、生産性の低下、離職の増加、怪我および疾病の増加と明確なつながりがあることがわかっています。週間労働時間は、現地の法律で定められている限度を超えてはなりません。さらに、週間労働時間は、緊急時や非常時を除き、残業時間を含めて週60時間を超えてはなりません。従業員に7日間に1日以上の休日を与えなくてはなりません。
  4. 賃金および福利厚生
    労働者に支払われる報酬は、最低賃金、残業、および法的に義務づけられている福利厚生に関連する法律を含め、すべての適用される賃金に関する法律に準拠しなければなりません。現地法を遵守して、残業に関して通常の時給より高い賃金が労働者に支払われなければなりません。懲戒処分としての賃金からの控除は、認められないものとします。各支払い期間に、労働者へ、実施した作業に対する正確な報酬を確認するための十分な情報を含む、理解可能な給与明細書を適切な時期に提供するものとします。臨時社員、派遣社員、および外注した社員の使用はすべて、現地法の制限を受けます。
  5. 人道的待遇
    労働者に対するセクシャルハラスメント、性的虐待、体罰、精神的もしくは肉体的な抑圧、または言葉による虐待などの不快で、非人道的な待遇があってはならず、またかかる待遇の恐れがあってはなりません。これらの要件に対応した懲戒方針および手順が明確に定義され、労働者に伝えられなければなりません。
  6. 差別の排除
    参加者は、ハラスメントおよび非合法な差別のない職場づくりに尽力する必要があります。会社は、賃金、昇進、報酬、および研修の利用などの雇用実務において、人種、肌の色、年齢、性別、性的指向、性同一性、出身民族または出身国、障害、妊娠、宗教、所属政党、組合員であるかどうか、軍役経験の有無、保護された遺伝情報、または結婚歴に基づく差別を行ってはなりません。労働者が宗教上の慣習を行えるよう、適度な範囲で便宜を図るものとします。さらに、労働者または潜在的な労働者に、差別的に使用される可能性がある医療検査または身体検査を受けさせてはなりません。
  7. 結社の自由
    参加者は、団体交渉の実施および平和的な集会への参加のための、労働者それぞれの意思に基づく労働組合の結成および労働組合への参加の権利を現地法に従い尊重し、またかかる活動を差し控える労働者の権利も同様に尊重するものとします。労働者および/または彼らの代表者は、差別、報復、脅迫、またはハラスメントを恐れることなく、労働条件および経営実践に関する意見および懸念について、経営陣と意思疎通を図り、共有できるものとします。

B.安全衛生

  1. 職務上の安全
    労働者の潜在的な危険(たとえば、電気およびその他のエネルギー源、火、車両、および落下の危険)への暴露は、適切な設計、工学的および管理による統制、予防保全、および安全作業手順(ロックアウト/タグアウトを含む)、および継続的な安全上のトレーニングを通して管理されなければなりません。これらの手段により、危険を適切に管理することができない場合、労働者には、これらの危険に関連するリスクに関する、適切で、正しく保守された個人保護具および教材が提供されなければなりません。労働者側から安全上の懸念を提起することが奨励されます。
  2. 緊急時への備え
    緊急事態および緊急時は、特定・評価され、その影響は、緊急事態発生報告、従業員通知および避難手順、労働者トレーニングおよびドリル、適切な火災探知および鎮静機器、適切な退出施設および回復計画を含む、緊急対策および対応手順の実施により、最小限に抑えなければなりません。かかる計画および手順は、生命、環境、および資産への損害を最小化することに重点を置くものとします。
  3. 労働災害および疾病
    怪我および疾病のケースの分類および記録、必要な治療の提供、ケースの調査、および原因を除去するための是正措置の実施、ならびに労働者の職場への復帰の促進のための規定を含む、手順および体系が、労働災害および疾病を防止、管理、追跡、および報告するために実施されなければなりません。
  4. 産業衛生
    労働者の化学的・生物学的・物理的物質への暴露は、特定・評価・管理されなければなりません。工学的または管理による統制が過剰暴露を統制するために使用されなければなりません。かかる手段により、危険を適切に管理することができない場合、労働者の健康は、適切な個人用保護具プログラムにより保護されなければなりません。
  5. 肉体的に過酷な作業
    手作業による原材料取り扱い、繰り返しの多い力仕事、長時間の立ち作業、および極度に繰り返しの多い、または厳しい組み立て作業など、肉体的に過酷な作業に伴う労働者の危険への暴露は、特定・評価・管理されなければなりません。
  6. 機械の安全対策
    生産機械およびその他の機械は、安全上の危険を評価する必要があります。機械により労働者が怪我をする危険がある場合、物理的な保護、インターロック、防護壁を設置し、適切に保守管理しなければなりません。
  7. 衛生設備、食事、および住居
    労働者は、清潔なトイレ施設、飲料水の利用、および衛生的な食品の調理、保存、および食事のための施設を提供されなければなりません。参加者または労働エージェントが提供する労働者の寮は、清潔かつ安全に維持され、適切な緊急時の非常口、入浴およびシャワーのための温水、適切な温度と換気、および適切に出入りできる適切な広さの個人スペースを提供しなければなりません。
  8. 安全衛生のコミュニケーション
    参加者は、労働者の一次言語による適切な職場の安全衛生トレーニングを提供するものとします。安全衛生関連の情報は、施設内に明確に掲載されるものとします。

C.環境

  1. 環境許可と報告
    必要とされるすべての環境許可(たとえば、放電監視)、承認、および登録を取得・維持し、最新の状態に保ち、その業務および報告に関する要件を遵守しなくてはなりません。
  2. 汚染防止と資源削減
    資源の使用および水とエネルギーを含む、あらゆるタイプの廃棄物の発生は、その発生源において、または生産、保守および施設プロセスの変更、資材の代用、保全、資材のリサイクルおよび再使用などの実践によって削減または排除すべきです。
  3. 危険物
    環境に放出されれば危険をもたらす化学物質およびその他の物質は、特定され、安全な処理、移動、保存、使用、リサイクルまたは再使用、および廃棄が確保されるよう管理されなければなりません。
  4. 廃水および固形廃棄物
    参加者は、固形廃棄物(危険物以外)の特定、管理、削減、および責任ある廃棄またはリサイクルを行うための体系的なアプローチを実施するものとします。操業、産業プロセス、および公衆衛生施設から生じる廃水について、排出・廃棄に先立ち、必要な特性確認、監視、管理、および処理を実施しなければなりません。また、廃水の発生を削減するための対策が実施される必要があります。参加者は、廃水処理システムの動作を日常的に監視するものとします。
  5. 大気への排出
    揮発性の有機化合物、エアロゾル、腐食剤、微粒子、オゾンを減少させる化学物質、および操業により発生する燃焼の副産物は、排出に先立ち、必要な特性確認、日常的監視、管理、および処理を受けなければなりません。参加者は、大気排出管理システムの動作を日常的に監視するものとします。
  6. 資材の制限
    参加者は、製品および製造(リサイクルおよび廃棄物のラベル付を含む)における特定の物質の禁止または制限に関する、すべての適用される法律、規制、および顧客要件を遵守しなければなりません。
  7. 雨水の管理
    参加者は、雨水の流出の汚染を防ぐための体系的なアプローチを実施するものとします。参加者は、違法な排出および流出が雨水管に入ることを防止するものとします。
  8. エネルギー消費および温室効果ガスの排出
    エネルギー消費および温室効果ガスの排出は、施設および/または会社レベルで追跡および文書化されなければなりません。参加者は、エネルギー効率を改善し、エネルギー消費および温室効果ガスの排出を最小化できるコスト効率の良い方法を追求しなければなりません。

D.倫理

  1. ビジネスインテグリティ
    すべてのビジネス上のやりとりで最高基準のインテグリティが支持されなければなりません。参加者は、あらゆる種類の贈収賄、汚職、強奪、および横領を一切禁止する方針を保持するものとします。すべての商取引は、透明性とともに実施され、参加者のビジネスの会計帳簿に正確に反映される必要があります。汚職防止関連の法律の遵守を確保するために、監視および施行の手順が実施されるものとします。
  2. 不適切な利益の排除
    賄賂またはその他の不当もしくは不適切な利益を得るための手段を、約束、申し出、許可、提供、または容認してはなりません。この禁止には、ビジネスを保持する、ビジネスを何者かに割り当てる、またはその他不適切な利益を取得するために、第三者を通して、直接的または間接的に有価物を約束、申し出、許可、提供、または容認することが含まれます。
  3. 情報の開示
    参加者の労働、安全衛生、環境実践、ビジネス活動、構造、財務状況、および業績に関する情報は、適用される規制と一般的な業界実践に従って、開示されなければなりません。記録の偽造またはサプライチェーンにおける条件または実践の不実表示は容認されません。
  4. 知的財産
    知的財産権が尊重され、技術やノウハウの移転は、知的財産権が守られた形で行われなければならず、また、顧客情報が保護されなければなりません。
  5. 公正なビジネス、広告、および競合
    公正なビジネス、広告、および競合の基準が支持されなければなりません。顧客情報を保護するための適切な手段を講じなければなりません。
  6. 身元の保護と報復の排除
    法律により禁止されていない限り、サプライヤーおよび従業員の内部告発者1の機密性、匿名性、および保護が維持されることを確保するプログラム。参加者は、従業員が報復の恐れなしに懸念を表明できるコミュニケーションプロセスを保持する必要があります。
  7. 責任ある鉱物調達
    参加者は、製品中のタンタラム、錫、タングステン、および金が、コンゴ共和国または隣接国で深刻な人権侵害を行っている武装グループを直接的または間接的に利するか、その資金源になっていないことを合理的に保証する方針を保持するものとします。参加者は、鉱物の原産地と流通過程についてデューデリジェンスを実施し、また顧客の要望に応じてその手段を顧客に開示するものとします。
  8. プライバシー
    参加者は、サプライヤー、顧客、消費者、および従業員など、取引を行う者全員の個人情報に関する合理的なプライバシーへの期待に沿うよう取り組まなければなりません。参加者は、個人情報の収集、保存、処理、移転、および共有を行う場合、プライバシーおよび情報セキュリティに関する法規制の要件を遵守しなければなりません。

※1:内部告発の定義:会社の従業員もしくは責任者、または公務員もしくは公的機関による不適切な行動に関する開示を行う者。

E.管理体制

  1. 会社の取り組み
    経営幹部により是認され、現地の言語で施設内に掲示されたコンプライアンスおよび継続的改善への参加者の取り組みを確認する、会社の社会的・環境的責任方針の記述。
  2. 経営者の説明責任と責任
    参加者は、管理体制と関連プログラムの実施の確保を担当する上級役員および会社の代表者を明確に特定します。上級管理職は、定期的に管理体制の状態をレビューします。
  3. 法的要件および顧客の要件
    本規範の要件を含む、適用される法律、規制、および顧客の要件を特定、監視、および理解するプロセス。
  4. リスク評価とリスク管理
    法令遵守、環境・安全・衛生2、および参加者の業務に関連する労働慣行および倫理リスクを特定するプロセス。特定されたリスクを管理し、規制の遵守を確保するために、各リスクの相対的な重要性を決定し、適切な手順と物理的管理を実施します。
  5. 改善目標
    参加者の社会的・環境的責任を改善するための書面の業績目標、ターゲット、および実施計画(かかる目標の達成における参加者の業績に関する定期的評価を含む)。
  6. トレーニング
    トレーニングマネージャーおよび労働者が参加者の方針、手順、および改善目標を実施し、適用される法規制の要件を満たすためのプログラム。
  7. コミュケーション
    参加者の方針、実践、期待、および業績に関する明確で正確な情報を労働者、サプライヤー、および顧客に伝達するためのプロセス。
  8. 労働者のフィードバックと参加
    本規範に記載されている実践と条件に関する従業員の理解を評価し、フィードバックを得て、継続的改善を実現するための継続的なプロセス。
  9. 監査と評価
    法規制要件、本規範の内容、および社会的・環境的責任に関連する顧客の契約上の要件への適合を確保するための定期的な自己評価。
  10. 是正措置プロセス
    社内外の評価、点検、調査、および審査によって特定された不足の適時の是正プロセス。
  11. 文書化と記録
    規制の遵守、会社の要件への適合、ならびにプライバシーを保護するための適切な機密性を確保するための文書および記録の作成と維持。
  12. サプライヤーの責任
    規範の要件をサプライヤーに伝達し、サプライヤーの規範の遵守を監視するためのプロセス。

※2:環境・安全・衛生のためのリスク評価に含まれるべきエリアは、生産現場、倉庫および保管施設、工場/施設支援機器、研究所および試験エリア、公衆衛生施設(トイレ)、キッチン/カフェテリア、および労働者の住宅/寮です。